僕の小説を読んで - 小説 - 大男

大男

 俺はマサオ。旅人だ。
 このパラディソ村に来て3日が経った。ここはよい村だ。空気もうまいし水もうまい。
村人もみんな気さくでいい人たちだ。
 この村で過ごす日々は楽しかった。そう・・・・・・・・・・・・・・あいつが来るまでは。
 その朝、俺はいつもより1時間早く目が覚めた。今思えば何か虫の知らせを感じたのだろう。
 顔を洗って宿を出ると、目の前に大男が立っていた。
「邪魔だ・・・・・・・通れねえよ」
 俺が脇をすり抜けようとすると、それを妨げるように男が移動する。
「悪いが今日からここは通行止めだ」
 無視して反対側から抜けようとすると俺の動きに合わせて動く。
 俺は腰の剣に手をかけ一気に引き抜いた。狙うは男の首だ。
 しかし・・・・・・・・・・・・・・・・。
 スカッ!
「なにっ!?」
 気付くとすでに男の姿はなかった。急いであたりに視線を走らせるが影も形もない。
「なんだったんだ・・・・・・・・・?」
 不思議に思って立ち尽くしている俺を、宿から出てきた客が追い抜いていく。
 そいつは振り返って・・・・・こう言った。
「”見た”んだね、あれを」
 俺がすぐさま村を出る準備をしたのは言うまでもない。

~完~