異世界への片道切符
俺の名は、ハルオ。何の変哲もない中学2年生さ。
今日は、俺の誕生日! みんな、祝ってくれるかな~!
朝ご飯を猛烈な勢いで掻き込んで、身支度もそこそこに俺は家を飛び出した。
後ろで母さんが何か言っているが気にしない。
通学路を猛烈な勢いで駆ける。
(誕生日、誕生日、誕生日!)
胸のワクワクが止まらない。
クラスのみんなに顔を合わせるのが楽しみで仕方ない。
早く、早く、早く!
そんな想いで頭がいっぱいで、だから俺はそれに気付かなかった。
ガガ~~~!
(えっ・・・?)
横から聞こえる猛烈なクラクション・・・・。
そして襲い来る罵声と暴力・・・。
それが、俺の最期だった。
目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。
(ここは・・・?)
周りを見回してみるが・・・。
(何だこれ・・・?)
そこには何もなかった。そして・・・。
(うわっ! 地面がない!)
そう・・・俺は浮いていた。
ここは・・・あの世なのか?
そう俺が自問していると、
「そうですわ」
「うわっ!」
どこからともなく声が聞こえてきた。
「驚かせてしまいましたわね」
すると目の前に人が現れた。いや・・・人ではない。
なぜなら人の背中に翼は生えないし頭の上に輪っかなんて乗っていないからだ。
「天使・・・?」
「お褒めいただきありがとうございます」
そいつは頬を染める。いや褒めてねーよ。
「君は・・・? ここはどこ・・・?」
「私は天使ですわ。そしてここはあの世ですわ」
「そうなのか・・・」
覚悟していたがソックが大きい。
「そうか・・・俺は死んだのか・・・」
「ご愁傷さまです」
「俺は死んだ・・・ここはあの世だ・・・で? これからどうすればいい?」
俺がそう言うと天使は居住まいを正し、今までとは打って変わって厳かな口調で語り始めた。
「あなたには選択肢があります・・・すなわち、ここで消滅するか、異世界へ転生するか」
悩むなぁ・・・。
「じゃあ、異世界に転生します」
「かしこまりました。ただ転生させるのもアレなので、すごい能力を授けます。転生してからのお楽しみです」
うれしい。
天使は手から光球を生み出した。
「この光にダイブすれば転生できます」
「何から何までありがとう」
「いえいえ」
天使に礼を言い、俺は光の中へダイブした。
さあ、異世界ライフの始まりだーーーー。
気付くとまた見知らぬ場所にいた。
「ここが異世界か」
周りを見渡す。どうやら中世ヨーロッパのような世界らしいな。
ふと思いつき俺はつぶやく。
「ステータス確認」
すると目の前にウインドウが現れる。そこにはこう表示されていた。
ハルオ Lv1
HP 65536/65536
MP ∞/∞
力 999
守り 999
す早さ 999
運のよさ 999
魔力 999
間違いなく世界最強だろう。
俺は叫んだ。
「魔王よ、現れろ!」
すると目の前に見たこともない男が現れた。男はきょろきょろとあたりを見回している。
「なぜ、我はここに?」
「貴様が魔王か。死ね!!!!!!!!」
俺は拳を振りかぶり、魔王にたたきつけた。
「グワアアアアアアアアアアア!」
魔王は一瞬でその身を四散させた。
「俺は、最強だ・・・だが、孤独だ」
そして思い出した。俺はただ、誕生日を祝ってもらいたかっただけなのだ・・・。
誰もいない異世界で、俺は立ち尽くしていた。
~完~